今年度いっぱいで閉館する、「女性と仕事の未来館」で非正規化する働き方についてのシンポジウムを聴講しました。
いつものように、印象に残った点だけを簡単に記してみます。
未来館フェスタ2011 シンポジウム「働く女性の現状とこれからを考える~非正規化する働き方のなかで~」
日時:2011年1月22日(土)13:00~17:00
会場:女性と仕事の未来館(東京都港区)
対象:一般
注目した点:非正規雇用や格差等の問題について議論されるところ。
内容:
第1部 基調講演 「非正規雇用の拡大と課題」
鹿嶋 敬 (実践女子大学人間社会学部 教授)
第2部 パネルディスカッション 「働く女性のこれからを考える」
福沢 恵子 (ジャーナリスト (財)日本女性学習財団理事)
宮本 みち子 (放送大学教養学部 教授)
山口 洋子 (日本労働組合連合会 副事務局長)
樋口 恵子 (評論家 NPO法人高齢社会をよくする女性の会代表理事)
横井 千香子 (株式会社キュービタス顧問)
渥美 雅子 (女性と仕事の未来館館長)モデレーター
<基調講演>
・第3次男女共同参画基本計画は非正規雇用をどう書き込んだか、という観点でいくつかのポイントがあった。
・同一価値労働同一賃金に向けた取組み推進が、今回初めて盛り込まれた。これは画期的。
・非正規労働者がスキルアップ、キャリアアップできる仕組みの構築が必要。
・派遣の現場では権利を主張すると切られる。
・フリーターの定義(「労働経済白書」)の中に、女性は未婚者、男性は未既婚者とある(本当?)
・中高年フリーターが増えている。
・高卒の女性の正規雇用の割合は40%を切っている。この人たちは非正規から容易に抜け出せない。
・正社員の待遇が下がるかもしれないが、それでも同一価値労働同一賃金を法制化して行く必要がある。
<パネリスト問題提起>
(1)福沢恵子さん「女性のキャリアの現状と未来」
・第一子出産で7割が退職。ずっと変わっていない。
・均等法以降、職場において意識的な女性排除は減少したが、家庭責任が女性に集中する状況や「男性がスタンダード」の職場環境は変わらず、女性が自己肯定感を持ちにくい。
・女性特有の「成功恐怖」や「役割葛藤」がある
・WLBの実現に必要な5つの力:問題発見能力、一芸、タイムマネジメント能力、人脈、コミュニケーション能力
(2)宮本みち子さん「しのびよる女性の貧困」
・日本型終身雇用制の変容:中核社員だけ正社員で確保、周辺を非正規へ。女性に顕著。
・女性が結婚に逃げ込める時代は終わった。
・地方では仕事のない世界が広大に広がっている。
・母親は短期間勤めて家庭に入った成功体験を娘に押し付ける。学業成績にはうるさいくせに、就職になると結婚のほうが大事と言う。矛盾した期待。
(3)山口洋子さん「非正規労働問題 連合の取組み」
・2007年に非正規労働センターを作った。
・職場での差別が一番悲しい。名前で呼ばれず、「パートさん」と呼ばれる。
・正規社員にボーナスが出ても、非正規社員には出ない。その時期に一番寂しい思いをする。
・パート労働者は労組に加盟するが、派遣社員は加盟しない。
(4)樋口恵子さん「働く女性・人生のすべり台三度笠」
・第一子出生で7割が辞め、中年時にさまざまな理由で退職を余儀なくされ、介護でまた離職の危機に直面する。
・2050年には65才以上の女性が人口の4人に1人になる。うち半数は被用者年金なし?貧乏ばあさん(BB)が大量発生する。これを防止しなければならない。
(5)横井千香子さん「キュービタス社における働き方の多様性」
・キュービタスは、セゾンカード、UCカードの入会、各種手続き、コールセンターの会社。
・派遣社員、アルバイト社員、メイト社員、専門職社員、社員という身分があるが、社内では差別なく一人一人を大事にし、権限委譲をしている。
・ルートチェンジ制度、社員登用制度を用意し、能力、やる気がある人を伸ばすようにしている。
・継続就労を前提とした待遇とし、年齢、雇用形態を問わない抜擢を行っている。このため社員はほとんど辞めない。
<ディスカッション>
宮本さん:貧困を回避するには、市場経済にまかせるか、所得再分配型(ヨーロッパ型)のどちらかを選ばなければならない。
福沢さん:再チャレンジ、巻き返しのできる社会にして行く必要がある。
高齢女性の就労あっせんも必要。
ジェンダーバイアス「男がかせぐべき」が男性を苦しめている。
専業主夫、兼業主夫もあっていい。
山口さん:非正規労働者の方へー>自分のおかれている状況をよく理解し、労働者としての権利などについて知識として身につけてほしい。
フェアワーク つながるネットというサイトで必要な情報提供をしているので、ぜひ利用してほしい。
横井さん:①同一価値労働同一賃金を実現することが大事。労働者は問題あれば労組に相談してほしい。
②扶養控除の枠をなくしてほしい。
③職業訓練校を充実してほしい。
樋口さん:ワークライフケアバランスを標準とした、三位一体の社会に組み直してほしい。
未来館は閉館するが、女性の就労について絶望はしていない。残りの人生を高齢者の貧困を防ぐ運動にささげていきたい。
渥美さん:平成8年に、非正規労働の賃金が正規労働の8割以下だったら公序良俗違反である、という判例が出ている。これは非常に価値がある。多いに広めてほしい。
<全体を通じての感想>
・雇用の問題がこれほど深刻化しているとは思わなかった。女子大生の就職難は非常に深刻。私大の中には、非正規雇用を含めた数で就職率を出している学校もあるから要注意。このままでは大卒無業者が出てしまう。鹿嶋先生は授業で女性の自立が必要と言っているが矛盾を感じるとのこと。自分として何もできることが思いつかない。娘にどのような職業感を語ればいいのか、考え込んでしまった。
・非正規雇用の労働者がスキルアップできるような仕組みが本当に必要だと強く感じた。それがなければ、非正規雇用者に育児休業が認められたとしても、取得の条件を満たす人はわずかということになりかねない。非正期雇用について、今後とも継続して情報収集して行こうと思った。
・キュービタス社の取組みは非正規雇用労働者の雇い方としてよいお手本になると感じた。機会があったらもっと詳しく話しを聞いてみたいと思った。
・女性と仕事の未来館は何度か利用しているが、駅から近く便利で、落ち着いた空間が広がっていて好きな場所だった。こういった施設が使えなくなってしまうのは本当に惜しい。掲示板には興味が持てそうなセミナーの案内がびっしり貼られていた。今後こういったセミナーは(料金が高い)別の場所で開催せざるを得なくなる。閉館に反対する数万の署名が集まったというのに、本当に残念だ。こういったことを防ぐために、公的施設の運用団体には、利用率をもっともっと高める工夫をしてもらいたい。
コメント
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[…] This post was mentioned on Twitter by 働き方を考える人, 山口理栄. 山口理栄 said: 同一労働同一賃金の法制化、非正規労働者がスキルアップできるしくみが重要です!働く女性の現状とこれから […]