横浜市ワーク・ライフ・バランス推進セミナー聴講報告

育休後コンサル

2010年12月16日に開催された横浜市主催のセミナーを聴講しましたので、報告します。

<概要>
平成22年度 横浜市ワーク・ライフ・バランス推進セミナー & よこはまグッドバランス賞認定・表彰式
日時:2010年12月16日(木)9時30分〜12時
場所:横浜情報文化センター 6階ホール (横浜市中区日本大通 11)
対象:企業経営者、人事労務担当者等
主催:横浜市ワーク・ライフ・バランス推進実行委員会、横浜市(こども青少年局、市民局)
注目ポイント :中小企業のワークライフバランスの成功事例を学べること。

<プログラム>
第1部 講演 講師 駒崎 弘樹氏(NPO法人フローレンス代表理事)
第2部 平成22年度よこはまグッドバランス賞認定・表彰式 林文子 横浜市長から認定証を授与
第3部 取組事例紹介 平成 22 年度よこはまグッドバランス賞認定・表彰事業所の中から 具体的な取組事例を紹介

<第1部 講演>
タイトル:なぜ働き方を変えるだけで、中小企業は儲かるのか?〜コストをかけずに業績をあげる、小さな会社の戦い方〜
・私達が働き方を変えなければならない4つの理由とは?
① 今後は、社員の共働きが当たり前になり、残業当たり前の職場は成り立たなくなるため
② 社員の多く、特に管理職世代が介護と仕事を両立させる時代になるため
③ これからは社員のうち誰かが常にメンタルヘルスに課題を抱えるため
④ これから入る若手社員は、上の世代と働き方に対する価値観が違うため
・ワークライフバランスとは仕事と生活が調和し、労働の生産性と人生の満足度が相乗効果を生んで、向上している状態のことであり、仕事をおろそかにするということではない。
・ワークライフバランスは新しい時代に合った働き方を行うことが合理的、という考え方のもとに生まれた概念であるが、日本では少子化に悩む日本では「子育て支援」の文脈でこの概念を輸入した。
・ゆえに「ワークライフバランス」=育児休業=女性支援・子育て支援という認識が成立していった。
・ワークライフバランスは、本来福利厚生ではなく、企業の得になる経営戦略の一つ。
・フローレンスでの実践例
ー 会議を変える:議題の事前通知、仮説を持ってくる、定刻開始、その場で議事録を取るなどの効率化
ー 仕組み化:マニュアルのフォーマット、業務フローのフォーマットを用意し埋めるだけで作れるようにする
ー 勤務の柔軟化:集中系作業は在宅勤務で行う、企画職以外は「ひきこもりタイム」
ー 1タスク2ピープル制:一つの仕事を二人以上で担当することで「誰でもできる化」
ー コミュニケーション施策:褒め合う制度、朝30分の掃除、朝礼・昼礼、ビジョン、フローレンスウェイなど
・働き方革命の成果:
ー 長時間労働の改善(1人平均15分の残業)、コストが減り利益が伸びた、働きやすい環境のため優秀な女性が0円採用できた(事務員募集←MBA、経理募集←公認会計士)、東京都WLB認定企業、経営者が2ヶ月休んでもまわる組織になった
・働き方革命は企業にとって得。投資0で実施可能であり企業の規模は無関係。コストを減らせるから不況時でも関係ない。少しの取組で他社差別化できる。働き方を変えて、業績を変えましょう。

<第2部:よこはまグッドバランス賞認定・表彰式>
・表彰事業所:2、認定事業所:21 計23事業所

<第3部:取組事例紹介>
(1)向洋電機土木株式会社 総務部課長 横澤 昌典氏
・屋内外の電気設備、設計・施行業者。従業員24名。
・会社の行動計画の一つに「社員重視の経営」「人材育成」「快適職場づくり」がある。
・CS(Customer Satisfaction)向上のためにはES(Employee Satisfaction)が必要であり、さらにはFS(Family Satisfaction)も必要であると考えている。このFSを支えるのがワークライフバランスである。
・定時退社推進、有休取得推進、短時間勤務は子が小学校卒業まで、有休最大30日まで積立可能などの取組。
・取組の結果、男性の育児休業取得者が出て後にも続いている。社内で新しい家族の誕生が増えた。
・女性社員への裁量権と決定権の積極的な譲渡をすすめている→意識の変化
・セクハラ、パワハラの相談窓口を24時間開設(請負で仕事をしている中でセクハラ、パワハラが起きやすいため我慢しないですぐ相談するように社員を指導している。)
・さまざまな行事、イベントを企画し家族ぐるみで交流を図っている。

(2)ホームケア有限会社 ひまわり訪問看護ステーション 所長 黒澤 愛美氏
・募集してもなかなか面接者が集まらない看護師の採用のため、事務所で子どもを預かることにした。
・応募者が増え、離職率も下がった。
・職場に子どもがいることで、雰囲気がなごやかになった。子どもたちもいろいろな人とふれあう経験ができている。
・所長本人(看護師)も子どもができ、預けながら働いている。

<全体を通じての感想>
・講演では「私達が働き方を変えなければならない4つの理由」について、統計データを元に誰でも納得できる根拠が示された。非常に参考になったので、使わせていただこうと思う。

・フローレンスでは会社のビジョンとして理想の働き方を目指すことが掲げられており、それに基づき実験的にいろいろな方法を試したという。これから改革に取り組みたいがいきなり全社で始めるのは抵抗があるという場合、まず一つの部署(例えば推進部署など)が実験台となっていろいろな方法を実験し、評価するところから始めてはどうだろうか。

・向洋電機土木、ホームケアの取組はいずれも、従業員の生活をサポートすることにより仕事で成果を出してもらう、という会社の姿勢がストレートに伝わってきた。中小企業では、制度の整備もさることながら、一人一人の事情に合わせて柔軟に対応していくこと、家族も含めた交流を深めながらコミュニケーションを密にすることで全体としてのパフォーマンスを高めていくことが大切であろう。

・ホームケアの黒澤所長は、事業所内託児所を検討している人に対して、「一歩踏み出してほしい」とエールを送った。自身の経験から、大変だけれどもやってみると採用への効果は大きいし、何より子どもたちが目の届くところにいるし何かと明るくて楽しいですよ、
というメッセージに聞こえた。特に医療関係の職場ではこういった取組で人材不足を解消したという話を数多く聞いている。ぜひ取り組んでみてほしい。

・よこはまグッドバランス賞の認定企業は、市の広報媒体やセミナー等で広く事業所をPRできたり、横浜市中小企業融資制度による低利の融資を受けたりできる。他の自治体でも同様の制度があり認定企業にはさまざまな特典がある。(例:東京都港区では入札の際に加点される。)これをお読みの皆さんも自分の自治体の制度を調べ、次回は認定に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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