パネルディスカッションには対談の2人に蓮舫氏、片山善博氏が加わりました。
【女性の元気が日本を変える~誰もが働き続けられる社会へ~
パネリストの方からひとことずつお願いします】
<片山>
鳥取県知事時代に、お役所のノーマライゼーションをやってきた。
議会でのやりとりは、あらかじめ作った原稿を読みあっているだけ。こんなのは議論ではないがそれがまかり通っていてだれもおかしいといわない。
男性だけの単一な世界。男尊女卑、女性は出世しない、庶務業務だけしかやらせない。男性はいろいろな職種を経験しているから管理職に選ばれる。
自分で変だなーと思うことは変えようとしてきた。
自治省時代、妻が出産するときに転勤を命じられて延期したいといったら怒られた。出産時期に引越しができないから時期を変えてくれといっただけなのに、あいつは転勤を断ったというふうに触れ回られた。
国会の質問取り、答弁の資料作り、大臣は用意されたものを読むだけなので、「一日所長」と呼んでいた。
空振りで夜中まで待機していても何もないこともある。自分が課長のときは、今日は待っている必要がないと自分で判断した日は自分の責任で部下を待機させずに帰したりした。その読みがはずれたことはなかった。
知事はトップだから、無駄は自分の一存でやめられる。
部下には、「活きのいい状態で質の高い仕事をしてもらいたい」といつも考えていた。
行政はサービス。客の半分は女性。それなのに女性の課長は1人、審議会は全員男性。
審議会の半分(4割から6割)を女性にしろといった。最初は人がいないとか文句を言っていたが、集まらなければ開催しないと言ったら、すぐに集まった。
よく自治体で女性の登用といいながら副知事だけ女性にするというのはまゆつばである。それでお茶を濁しているケースが多い。
ボトムアップ、男性も女性も職場をローテーションし、男性も女性も庶務をやるようにした。
特に重要なのは、県庁の中枢を変えること。中枢とは財政課と人事課である。
ここの職員の3分の1を女性にしようとしたら、ものすごい抵抗があった。徹夜があるから無理だと。
本音は、女性に頭を下げたくない。予算をとりに行くとそこに女性がいて、頭を下げないと取れないのが嫌だから。実際には徹夜しなくても仕事は回るようになった。
秘書室を男女半々にしたら、男性職員が不在のとき女性職員がいても仕事の話をしない。女性はいても目に入らないかのようだった。
そこで全員女性にした。
地元民が知事に頼みごとをするのに女性と話をしなければならないようになった。これも慣れてくると、全く当たり前のことだが、女性職員でもちゃんと知事との約束を取り付けてくれることが皆に理解されるようになった。
<蓮舫>
子どもを持つようになって、自分の子どもだけ幸せにしても同世代のまわりの子どもも幸せでなければうまくいかないということがわかってきた。
少子化に取り組みはじめたら、景気が悪くなってきた。そのため、国の予算であれもこれもというのは難しい状況である。
(政治の世界では女性は大変なのではないか、という質問に対し)男尊女卑がきびしいのは政治家よりテレビの世界である。女性はどうしてもテレビの中では添え物扱いになってしまう。
それに対して、政治家は選挙で選ばれた人たち同士なのでむしろ平等。
その中で活躍するには、はっきり意見を言うことが大切だと思っている。
<内永>
1.日本の企業トップ、ここ2-3年でだいぶ変わってきた。
明らかにうちは女性登用しなければいけないだよね、という経営者が増えている。話を聞いてみて、
・女性の視点がほしいんだよね x
・優秀な女性を活用したい。 ○
・違う価値観違うバックグラウンド ○
僕は女性の登用は大事だと思う、でも進んでいない。という経営者も、多い。
なぜうまくいかないのか?と聞くとこんなことを言う。
①中間管理職がうまくいかない→社長、それはあなたの責任。トップが何を大切に考えているかを中間管理職は敏感に感じ取っている。
この層を、そのくずれにくさ、がんこさから粘土層と呼ぶ。これは上から下から少しずつ溶かしていかなければ。
②会社もその雰囲気になってきたけど、女性たちがその気にならないんだよね。女性がのってこない。
→ロールモデルがいないから。
ポジションが上がることは給与や部屋の問題ではなく、夢を実現できる。組織を使って実現できること。
それを身近な先輩の言葉で後輩たちに伝えることがとても大切。
→成果の評価基準がはっきりしていないから、工夫のしがいがない。
長時間労働が評価されるなら自分はやりたくない、というふうにならないためにも、評価基準が明確なことが必要。
日本にしか女性がいないなら、日本の女性しか子どもを産まないなら別だけど、そうではないのだから、解決方法をさがせばあるはず。世界中の国がこの問題を解いている。
<佐々木>
なぜこんな人が社長?という人がたくさんいる。
このままではいけないと思いつつある。
でも、モノカルチャーは居心地がいいし、コンフリクトは面倒くさい。
順番として、まず役員に女性を持ってくる。いいんじゃないの?となったら、そのあと少しずつ会社は変わっていく。
【長時間労働をなくすにはどうしたらよいでしょうか】
<佐々木>
長時間労働については、なくそうとする努力が足りないと思う。自分がこうしたいから、こうする。という気持ちでやればいい。
<片山>
官庁は長時間労働が多い。無駄である。一年を通じて長時間労働をしている。
メリハリをつけなければいけない。本当はみんないやなのだ。
マネジメントがちゃんとできていないことが問題。長時間労働によって誠意を見せようとする人がいて、それを許してしまっている。
自分の人生を大切にすることが、長時間労働をなくす。
<蓮舫>
自分ががんばったからあなたもがんばんなさい。という上司が多い。
上司はなかなか変えられないから、仲間を作ることが大切。
長時間労働をしなくても、目に見える成果をチームで出してみる。
ただ、睡眠時間を数時間に削って事業仕分けの準備をしなければならないが、そこで成果を出すことは、自分にとって働きすぎとは思っていない。
<内永>
長時間労働で仕事をハードにこなしているかと思うと、実はやっていない。
日本は日本のことしか考えていない。
海外の人はよく働いている。3ヶ月死に物狂いで働いて、3週間休みをとるとか。そういう人とグローバルで競争をしていかなければならないのだ。
何のためにこの仕事をやっているのかをよく考える。
仕事のむだをなくすには、見える化することが大切。これは非常に大切なことである。これだけやったらこれだけ効果が出たということを見えるようにする。
戦略や、業務プロセスを共有化することが大切。
ダイバーシティマネジメントを推進するということは、社内改革をするということに等しいのだ。
【聴衆へ最後のメッセージを】
<佐々木>
(女性が活躍することは)あくまで自己責任で行うことではあるが、ネットワークを活用することが大切。
<蓮舫>
みんなが輝かなければいけない。
そのためには、だれかが自分のためになにかをしてくれるのを待っていてはいけない。まず自分で努力してください、そしてそのために何かが必要なとき、なにかがうまくいかないときは、政治にそれを伝えてください。必ず応えます。あきらめないでください。
<内永>
自分の目標を2ランクぐらい高くあげてください。
部長になりたいと思っている人は、2ランクあげて社長になることを目指してみてください。
目線を上げることで、死ぬほど働くことになるかもしれません。
子育てしながら働いている知人がいうことには、「女性だけが人生のフルコースを楽しめる。」仕事を楽しみ、妻であり、母であることも楽しめる。
また「イタキモ」ということばもある。イタいけどキモちよい。苦労を乗り越えることで楽しみを得ることができるのではないでしょうか。
<片山>
1.男の問題。男の働き方の問題である。
会社では男女同じように働き、家庭では女性が専業主婦のように働く、というのではいけない。
男性は、家庭内進出をせよ。
2.自己本位で取り組め。
大学までは男女一緒にやってきた。しかし社会人になると女性はまだまだ生きにくい面がある。
過剰同調しないことが大切。職場では女性である自分にこういう役割、行動が求められているからそうしよう、と無意識に合わせてしまうことが女性の場合よくある。しかし、変だと思うことは、変だといい、変えていこう。
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以上がパネルディスカッションです。ノートの記述をあとから補ったので、多少の言葉の違いはご容赦ください。
パネルディスカッションの感想は、それぞれの方の発言は非常に示唆に富んでいて参考になったけれども、ディスカッションにはなっていなかった、ということです。短い時間の中でそれは最初から目指していなかったのかもしれません。一人一人が自分の持論を述べたに留まり、その場でのやりとりがなかったのが少し残念でした。
もう一つ残念だったのは、プライベートな話が聞けなかったことです。6人のお子さんをお持ちの片山さん、バリキャリを地でいく内永さん、小学生をお持ちの蓮舫さん、病気の奥様の看病と3人の子育てと仕事を両立してきた佐々木さんといった多様な方々が集まったにもかかわらず、個人的な経験談がほとんど聞けませんでした。これは意識的に聞かなかったのかもしれませんが、もったいないと感じました。
おもしろかったのは片山さんの県庁時代のお話です。いかに女性を職場に登用していったか、というお話がまるでフィクションのようにおもしろく、小気味のよさも手伝って非常に楽しめました。
片山さんのよく使った表現が、「知事はトップだから○○ができる」です。この言葉を何度も聞いていると、何か自分がやりたいことをやるには、トップになることが近道なのではないかと思えてきます。何も、知事や社長でなくても、グループのトップ、プロジェクトのトップ、チームのトップ。女性もこういった役割に積極的につくことで、自分のカラーを出して自分の価値観で(長時間労働でなく生産性の高さで)個人を評価する、といったようなことが可能になるのです。
また、内永さんは日本の企業がダイバーシティに取り組み始めるときのトップの言い訳を非常に上手にまとめてくださいました。これを知っておくことで「ああ言う」トップには「こう言う」といった対処が可能になります。内永さんの視点は常にグローバルであり、閉塞感漂う日本の企業社会から私たちを広い世界に連れ出してくださいます。と同時に日本の企業がもたもたしていると優秀な女性たちはますます海外や外資系企業に流れていってしまうのだろうなあ、という感想を持ちました。
最後のメッセージでは、4人の方全員が、私たちに自分で行動することが大切、とエールをくださいました。
当たり前のことですが、この半日の経験を経た上で聞くと、何か行動に移さなければ、という気持ちになるから不思議です。
私自身、このブログを書くことでその一歩を踏み出していきたいと思います。
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