法廷編(3):育児休業差別による原状回復等請求事件 その5

育休後コンサル

2010年9月16日に傍聴した、育児休業差別による現状回復等請求の証人尋問の報告はこれが最終回です。いよいよ、3人目の証人として原告が登場しました。
おさらいしておきますと、原告はゲームソフトの制作会社の社員だった2009年6月、育休から復帰後不当に降格・減給処分を受けたとして、約12年勤務してきた会社を提訴しました。

このエントリは、下記のエントリの続編です。
初めての裁判傍聴:育児休業差別による原状回復等請求事件
初めての裁判傍聴:育児休業差別による原状回復等請求事件 その2
法廷編:育児休業差別による原状回復等請求事件 その3
法廷編:育児休業差別による原状回復等請求事件 その4

以下の日時に行われた裁判を傍聴しました。
日時:2010年9月16日(木)13:15〜17:00
場所:東京地方裁判所 527法廷
Webサイトはこちら
裁判所|東京地方裁判所

3.原告

この日の最後に証言したのは、原告でした。
(半年経ってしまい、メモと記憶に頼って書いています。正確な記録ではないことをご容赦ください。)
原告は最初の方でこのように述べました。

・子どもを持った女性は仕事をちゃんとできない、という偏見を感じた。
・子どもを持ったらキャリアはおしまい、という風潮をなんとかしたい。

そして、そのあとは先の二人の証人(原告の同僚、上司)が述べたことについて、解釈が違う部分について細かなやりとりがありました。

先の二人の証人の証言や代理人との質疑応答と、原告の証言との食い違いで印象に残っている点は以下の通りです。
・原告の同僚は、「海外のライセンサーから、担当者が代わりすぎる(原告が休職したことを指す)というクレームを受けていた」と言っていたが、クレームの時期や本当にそういった主旨のクレームだったかどうかがあいまい。
・原告の同僚と原告が海外ライセンスの会議で同席したとき、会議を回していたのは原告であり、同僚は一度も発言しなかった。(私見:原告が降格に値するという評価の合理性を疑わしくさせる。)
・原告は、復職後に海外ライセンスの仕事を継続したとしても、海外出張は必須ではなかったと考えている。(私見:海外出張が必須だから子育てしながら海外ライセンスの仕事を継続するのは無理である、という会社側の見方を否定したもの。なお、仮に必須だったとしても原告はベビーシッターを雇うことで海外出張に備えていた。)

この日の3人の証人による証言は以上です。

以下は私の感想です。

この日の証人はすべて女性でした。原告の同僚も女性、原告の上司も女性、もちろん原告も女性。過去に育児休業を取得した人の数から見ても、この会社は、女性が活躍している会社であることは間違いありません。それなのに、裁判で女性同士が原告と会社側証人という立場で対立しなければならないことが残念です。

萩原久美子著『迷走する両立支援』
では、女性の活用(均等推進)と両立支援がかみ合っていない日本の企業の実態が子育て中のさまざまな女性社員の証言によって浮き彫りにされています。女性を積極的に登用する会社でも、育児休業を取得した後はキャリアを継続できない部署に異動させるようなケースがよくあるのです。著者はこの現象を、「両立支援と均等推進をつなぐ回路が、職場に決定的に欠けている」と表現しています。

原告のケースは、復職後の降格、減俸の幅が大きすぎ、明らかに不当だという印象を持ちます。しかし、ここまで目に見える形でなくても、育児休業後の女性社員の扱いは「がんばって復帰した意味はなんだったのか」と思わざるを得ないような状態であることが多いことは経験者なら誰でも知っているでしょう。

企業はこの裁判の意味をよく考え、女性従業員が育児休業を取得したら一律に異動、ではなく、その人物の能力、実績、経験を最大限に生かし、伸ばすための処遇を考えてほしいと思います。また、女性社員は、復職後も引き続き仕事のやりがいを追求し、会社側に自分の意思を伝えてください。両者が互いを理解してコミュニケーションを取らなければ、状況の改善は望めないでしょう。私自身は、育休後も社員がやりがいを感じて働き続けられるように(=両立支援と均等推進をつなぐ回路がきちんと機能するように)、企業と個人の両方を対象とした支援を今後とも続けていくつもりです。

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