時短社員に厳しい目を向ける社員がいる
企業で管理職向けの研修を行うときに、しばしば問題にされるのがこの話です。
短時間勤務を使える社員は、早く帰れるから得なのでしょうか。
確かに、早く帰れる人とそうでない人、ということだけに注目して考えれば、早く帰れない人が時短の人をうらやましいと思っても無理もないでしょう。
特に、社員同士では無理もない面もあるかもしれません。
しかし、管理職はそういった近視眼的なものの味方をしてはならないと思います。
そもそも、育児休業制度や短時間勤務制度は、育児をする社員の利益のために作られたというよりは、出産した社員が仕事を辞めないですむように、という目的でできた法律であり、制度です。
第一子の出産後の就業継続率は、2010-2014の5年間で初めて5割を超え、53.1%になりました。
2005-2009年では40.5%だったので、大きな変化です。
この理由としては、1992年から始まった育児休業制度、そして、2010年(100人以下の企業は2012年)に義務化された短時間勤務制度の効果が現われた、ということが考えられます。
過去には辞めざるを得なかった人が、時短だからこそ職場に復帰することができるようになった、と考えれば、時短制度が会社にもたらしたメリットが理解できるのではないでしょうか。
まずは管理職が時短の社員に対して、仕事を少ししか任せられなくて、扱いづらい社員だ、という考え方、態度を改める必要があると思います。
そう思っていると、普段の言動から、その考え方が部下にも伝染してしまうからです。
不公平感はどこから
多くの会社では時短社員は働いていない分の給料をもらっていないので、通常勤務の社員から見て、給料の面での不公平感はないはずです。
だとすれば、通常勤務の社員の不満はどこからくるのでしょうか。
考えられる理由としては、時短社員の仕事を必要以上に減らし、それが他の社員へのしわよせになってしまっている点です。
いわゆる、管理職による「過剰な配慮_です。
管理職は、時短の社員の個々の状況や本人の意思を確認せずに、とりあえず仕事の負荷を減らしておけばいいのかな、と考えがちなのです。
これは、多くの企業で共通して起きている問題点です。
過剰な配慮が起きることを防ぐには、育休後の面談により、本人の両立環境を知り、時間の制約の強さ、どのくらいの仕事量が可能かをきちんと把握することが有効です。
それに基づき、組織全体で無駄な仕事を取り除いた上で、本人の能力やこれまでの経験を最大限に発揮できるような仕事の割り当てを行い、周囲への負担増を最小限にします。
場合によっては、他の社員への仕事の割り当ても調整し、特定の人に負荷が集中しないようにしましょう。
時短社員への評価、育成
時短の社員はしばしば、出産前に比べて仕事のやり方を工夫し、生産性を上げている場合が多いので、それを評価し、他の社員にも共有して職場全体の効率向上を行うことです。
通常勤務の社員の時間外労働が多いと、時短社員に対して時間の差が大きくなり、不公平感が募ることにもなるので、チーム全体の労働時間を減らす方向で努力することも大切です。
ある企業では、時短の社員と同じ時間にほかの社員も帰す日を作る、という取り組みをしている管理職がいました。
若手社員が多い場合、会社が時短社員をどのように評価し、育成していくのかを注視しているはずなので、管理職はそれを意識した行動をしましょう。
時短社員間でも、評価のメリハリをつけることで、やる気のある社員は希望を持って働いていくと思います。
管理職は、職場全体を見渡して、一人一人の能力や経験を最大限に発揮させることができているかを常に把握しておきましょう。
また、育児をしている社員だけでなく、一人一人の部下が個人の生活を犠牲にすることなく仕事に取り組めているかどうかにも、気配りを忘れないようにしましょう。
管理職がこれらの行動をとっていれば、次第に時短社員への不公平感は薄れていくのではないかと思います。
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