本の紹介:「ふたりの子育てルール」治部れんげ著

共働きの子育てを、二人で協力しながら無理のない形で楽しく行いたい、と考えている方のために書かれた本です。
サブタイトルは、「『ありがとう』の一言から始まるいい関係」。どの夫婦にとっても理想の関係ですね。ここに近づくためにはどうしたらよいのか、読んでいくうちにヒントをつかめるようになっています。
この本には、経済誌の記者である著者と大学で経済学を教えるパートナーとが工夫して実践してきたことや、日米のさまざまな夫婦を取材した結果から見えてきた夫婦のあるべき姿が、とても自然な形で紹介されています。いえ、正確に言うと、これまでとは違う、新しい夫婦のあり方が提示されているにもかかわらず、過激でも強引でもなく、うんうんそうだよね、と納得しながら読めるような形で書かれているのです。
この本を、育休後カフェの席に持っていき、参加者に紹介したところ、パラパラとページをめくっていた1人が「キャリア志向でも主婦志向でもない女性が一番悩む」という小見出しを見つけて、そうなんですよね〜とため息をつきました。本では、そういった女性たちの悩みの原因を掘り下げて、考え方を整理した上で本人が意思決定するための支援をしてくれます。
私が特に注目したのは「『キャリア幻想』という麻薬」という一節です。

確かに仕事には大きな魅力があります。がんばった分だけ評価される。独身で好きなだけ働けるなら、すべての時間を仕事か仕事に関する投資にあてられる。顧客から喜ばれると、「生きがい」を感じる。上司に評価されると、がんばってよかったなと感じる。(略)こうしたことをすべて私も二十代の頃に経験してきました。
しかし、これは危険な麻薬ともいえるのです。(略)
キャリア幻想から解放されるきっかけは、子どもが生まれたことでした。今も仕事は楽しいし好きですが、昔のように起きているときはずっと仕事をするということは物理的にできなくなったからです。働ける時間は昔より短くなりましたが、他人が何かを大事に思う気持ちに共感する度合いは以前よりずっと増えました。(略)

育休後カフェに来る女性の中にも、出産前は仕事に没頭してきたという方がたくさんいます。そんな方たちに、起きている時間をすべて仕事にささげ、成果を出すことに喜びを感じる二十代を過ごした著者によるこの一節は深く印象に残るのではないでしょうか。子育てと仕事の両立に真剣に悩む女性たちの、これからの生き方に指針を与える考え方が述べられていると感じました。
ここまで、女性の読者に響くポイントを中心にご紹介してきましたが、「これからのワーク・ライフ・バランス」「父親も育児休業を取ろう」といった、子育ても仕事もしたいパパへのアドバイス、夫婦のコミュニケーションの大切さを示した事例が盛りだくさんです。また、家計責任も家事責任も二人で分担する、という考え方、さらに職場や社会全体の課題についても最新の調査結果をふまえて提言しています。
子育て世代だけでなく、経営者、部下を持つ管理職、人事担当者、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ・マネジメント推進担当者、地域で子育て支援にたずさわる方たちなどに、強くおすすめしたい本です。

治部さんとの出会い

2008年、育休後コンサルタントとしての仕事への転身を考え始めた当初、インターネットの検索で見つけたのが治部さんのブログ
Rengejibuの日記
でした。私が日頃感じているけれどもうまく言葉にできないことが簡潔にまとめられているブログを、かかさずチェックするようになったのです。
その後始めた twitterでも、仕事と子育てに関してつぶやく @rengejibuさんの発言に遭遇しフォローするように。そして2010年のイー・ウーマン主催第15回国際女性ビジネス会議の分科会「Working Mothers & Working Fathers ~働くパパと一緒に社会を動かす」で発表された治部さんに、初めてお会いすることができました。
2011年7月のNPO法人ファザーリング・ジャパン主催のシンポジウムで再会、そのとき私がパネリストとして紹介した内容が、この本の中で引用されています。その日治部さんはパートナーの竹内さんと交互に登壇し、お二人ならではの両立エピソードをお話しくださいました。この本の中で書かれていることの一部も含まれていたように記憶しています。
2012年1月には、twitterの #wlb_cafe の仲間といっしょに企画した電子出版記念パーティーに、赤ちゃん連れでご参加いただき、ネットだけのつながりだったたくさんの子育て仲間とリアルでの語らいを共有することができました。
今回、人生初の献本を経験し、とても嬉しかったです。もっと早くブログで紹介したかったのですが、片っ端から引用したくなってしまってうまくいかず。やっと書くことができました!治部さん、ありがとうございました。
本を書きました ー Regejibuの日記

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