ワーク・ライフ・バランス・コンファレンス〜第4回ワーク・ライフ・バランス大賞

育休後コンサル

到着すると、すでにアステラス製薬会長の講演が始まっていました。会場はほぼ満員でした。

  • ワーク・ライフ・バランス・コンファレンス〜第4回ワーク・ライフ・バランス大賞 表彰式及び交流会〜日時:2010年11月11日(木) 13:00~17:00
    場所:九段会館3階 真珠の間(東京都千代田区)
    対象:経営者、人事担当者、従業員およびワーク・ライフ・バランスに関心のある方
    主催:次世代のための民間運動〜ワーク・ライフ・バランス推進会議〜
    公益財団法人 日本生産性本部
    内容:
    13:30-13:40 開会挨拶
    ワーク・ライフ・バランス推進会議 代表幹事
    (財)中部産業・労働政策研究会 理事長 加藤 裕治 氏
    13:40-14:40 講演
    「企業経営とワーク・ライフ・バランス」
    アステラス製薬株式会社 代表取締役会長 竹中 登一 氏
    14:50-15:40 「第4回ワーク・ライフ・バランス大賞」表彰式
    ・受賞者発表
    ・講評 ワーク・ライフ・バランス推進会議・代表幹事  鹿嶋 敬 (実践女子大学 教授)氏
    ・表彰状授与/祝辞 公益財団法人 日本生産性本部 会長  牛尾 治朗 氏
    15:50-17:00 事例紹介「ワーク・ライフ・バランス大賞・受賞者の成功事例に学ぶ〜成果を出す取り組みを検証〜」
    【受賞組織】
    六花亭製菓株式会社 代表取締役社長 小田 豊 氏
    シャープ株式会社 取締役兼執行役員 谷口 信之 氏
    株式会社富士通ワイエフシー 代表取締役社長 宮浦 完次 氏
    【コーディネーター】
    ワーク・ライフ・バランス推進会議 推進委員
    株式会社キャリアネットワーク 代表取締役会長 河野 真理子 氏

    聞きながら気づいたことを記します。
    <講演>
    ー アステラス製薬は2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してできた会社。そのタイミングでワークライフバランスに取り組み始めた。
    ー グローバル企業で海外に拠点。海外では女性社員ががほぼ5割なのに対し、日本では17%。スイス、フィリピンでは販売会社の社長が女性。
    ー Fortune 100 Best Companiesに選ばれている各社の共通点の中で、唯一アステラスに欠けていたのが「多様な働き方、ワークライフバランス」という項目だった。
    ー 東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授から、「ワークライフバランスの支援は、社員にとっての新しい報酬」であると指摘された。
    ー ダイバーシティ推進室による職場の意識改革とワークライフバランスの双方を推進した。
    ー ユニークな取組:Family Friday(金曜日は16時まで)、労働時間適正化キャンペーン、休暇取得キャンペーン、結婚時同居支援制度、託児費用補助(認可園に入所できない場合最大で16万円/月、最長6ヶ月補助)、復職支援イベント、小3までの短時間勤務、在宅勤務(最大4日間/週)、父親の育児参画キャンペーンなど
    ー 女性MRの退職率が10数%から3.9%に減少
    ー WLB推進・ダイバーシティ経営の会社としての認知度向上
    第3回ワーク・ライフ・バランス大賞 受賞(2009年11月)
    平成21年度 茨城県子育て応援企業(2010年2月)〜仕事と子育て両立支援部門〜 優秀賞 受賞
    日経働きやすい企業ランキング
    2008年 166位→ 2009年 73位→ 2010年 47位
    平成22年度 「均等・両立推進企業表彰」
    均等推進企業部門 東京労働局長優良賞 受賞(2010年10月)

    <表彰式での各社の取組紹介内容>
    ー六花亭製菓グループ:年間計画策定と毎月の取得状況チェックにより、100%の有給休暇取得を実現
    現在、21年連続有給休暇取得100%継続中。
    従業員6人で社内旅行として認定し、一人年間20万円まで旅行代金を補助する。
    社内託児施設を設置し、育児休業の取得を奨励、社内における育児休業取得の日常化を実現。

    ー有限会社COCO-LO(訪問介護、通所介護、居宅介護支援)、群馬県桐生市:
    育児休業取得と職場復帰の仕組みづくりで、介護人材の確保と定着を推進
    準社員(短時間正社員)制度の導入:1日4時間30分以上、一週間22時間30分以上の範囲で勤務できる。
    有給休暇の時間単位取得、70歳定年、無料託児室完備(長期休みには小学生も利用可能)、育休終了時のならし勤務などユニークな取組
    売上高向上、利用者満足度の向上、お互い様意識の浸透による離職率の低下、求職者の応募増加、北関東初の中小企業でのくるみんマーク取得

    ーシャープ株式会社:男性の育児求職者を増加させるとともに最長2年間に介護休職を拡大
    2004年からポジティブ・アクションに着手、2009年からは障害者、外国人など対象者を拡大
    育児休職中の経済的支援(10日間の有給化、月6万円の支援金)
    介護短時間勤務制度は事由消滅まで延長可能
    成果として勤続年数に男女の差が少ない(男性19.7年、女性18.6年)、女性管理職の40%が母親社員、メンタルヘルス求職者が減少、男性の育児休職取得者数が増加2007年1人→2008年78人→2009年54人

    ー株式会社富士通ワイエフシー:「自分時間創出」を掲げた残業削減運動とテレワーク推進による働き方柔軟化
    2006年1月に策定した行動指針に「女性も主役になること」を明示
    女性社員の意見を吸い上げ、80項目にもわたる要望を集め必要な対策を講じた。
    社長直下にワークライフバランス推進室を設置。
    社員の内定から定年退職までをサポートする「社員LCM(ライフサイクルマネジメント)サービス」を開始。
    女性の結婚・出産での退職者は2009年度にはゼロになった。

    ー社会医療法人明和会医療福祉センター ウェルフェア北園渡辺病院(鳥取県鳥取市):
    勤務形態の柔軟なせんたくを可能にし、これに対応した「報酬ポイント制」を導入
    看護職が働きやすい環境を保つことが患者や家族の期待に応えることであり、配置人数にゆとりをもたせる取組を行った。→各部門に基準を上回る人員を常時配置するように心がけた。
    7段階の勤務ステップを用意し、ステップアップとステップダウンの両方に対応した。
    お金だけでなく働きやすさ、休みやすさを報酬としてポイントを公開し、報酬受取方法を選択してもらう人事制度を設けた。
    職場で相談しづらい悩みを直接伝えるSOS相談窓口を設けた。人事部門、ソーシャルワーカー、臨床心理士で構成し、相談者の立場とプライバシーは徹底して保護されている。
    成果として採用数の安定、離職率の低率での推移、育児理由の離職が過去5年以上にわたりゼロ。

    ー日本建設産業職員労働組合協議会:統一土曜閉所運動などを進め、労使協働により建設業界の時短を強く推進

    ー富士ソフト:従業員の健康に重点を置き、メンタルヘルス対策の強化と快適職場計画を推進

    <パネルディスカッションで気になった発言>
    ー富士通ワイエフシー:社長就任後2ヶ月けがで入院した。そのことで社員の大切さに気づく。
    そのすぐ後、一人の女性社員から、女性が出産で会社を辞めるのをなんとかしたい、というメールが社長宛に届いた。その熱い想いに動かされた。(筆者注:詳しくは下記の記事に書かれていました。)
    ダイバーシティーマネージメントに取り組む女たち【37】富士通ワイエフシー 日経ビジネスオンライン
    (全文を読むには日経BP社への無料の読者登録が必要です)
    テレワークの取得率が上がらない(3−4割どまり)ため、マネージャーに在宅勤務をさせてみた。
    ノンインテリジェントワーク、シンキングタイムでもいいからテレワークしてよい。パソコンなしでもいい。
    これにより、申請が7割まで来た。
    ー六花亭:休暇を有効利用して保育士の免許を取った社員がいる。→初代の社内託児所の園長に
    ーシャープ:部門長に男性の育児休業の計画書を出させていく。

    <全体を通しての感想>
    ー昨年受賞したアステラス製薬の取組は、新会社の発足と完全に同期がとれていて、理想型のお手本という感じがしました。ビジョンから始まってすべての施策がきれいに整合性がとれているので、ほころびがなく自然。ただし、当初たてたビジョンを何としてでも実現する、という強力なトップダウンの意思があったからこそ、うまくいったのだと思います。事業規模の大きな会社、女性の営業職が活躍する会社は、お手本にしてほしいです。

    ー今年受賞した会社は、それぞれが自社の特徴に合った取組をしていて非常に興味深かったです。
    六花亭グループ、COCO-LO、渡辺病院は、いずれも女性の働き手が多く、ワークライフバランスに配慮しなければ従業員が必要数確保できなくなる恐れがある、という共通点があります。
    そのため、多様な働き方を受容するための取組が、どれも思い切りよく従業員に寄り添っていて、気持ちがいいくらいでした。
    こんな制度を作ったら破綻するのでは、という議論を重ねた上で採用されたり、試行錯誤を繰り返し微調整されてきたものなのでしょう。
    これらの成果として、例えばCOCO-LOでは、お互い様意識が浸透、責任感が芽生えた、キャリアアップや将来的に会社を起こす夢など明確な目標を持つ社員の増加、新聞、テレビで報道されることによる働きがいの向上など、従業員全体のレベルアップが図れた様子がわかります。
    こういった変化を数字に置き換えるのは難しい点もありますが、今後、ワークライフバランスを各社で推進していく上で、何らかの数値化ができるとより経営目標として打ち出しやすくなるのではないかと思いました。

    今回の発表を聞いて、中小企業ならではの取組の重要さ、そして推進するにつれ組織が変わっていくおもしろさ、というのが存在することを確信しました。今後の活動に生かしていきたいと思います。

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