本の紹介:新しい人事戦略 ワークライフバランス 考え方と導入法

新しい人事戦略 ワークライフバランスー考え方と導入法ー

新しい人事戦略 ワークライフバランスー考え方と導入法ー

(株)ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんが、企業でワークライフバランスの推進に取り組む人事担当者や、プロジェクトメンバーに向けて書かれた本である。

ワークライフバランスコンサルタントである小室さんが、さまざまな企業を支援してきた中で蓄積してきたノウハウが満載で、こんなに書いて大丈夫なの?と思うぐらい、潔く公開されている。

この本の出版は2007年7月であるが、私が似たようなプロジェクトの一員となって、意識改革の取組みを始めた2006年4月にもし出ていたら、もっとプロジェクトは順調に進んだだろう、と思えるぐらい、実態に即してよく書かれている。

先進事例として取り上げられている企業は、NTTデータ、花王、クレディセゾン、サイボウズ、松下電器産業(当時。現在はパナソニック)、三菱UFJ信託銀行である。それぞれの事例に対して、著者のコメント(なぜこの企業はこういった形の取組みになり、それがうまくいったのか)と、担当者インタビュー(現場の生の声)が非常に参考になった。

ワークライフバランスを導入する8ステップが紹介されており、これに従えば実際にプロジェクトを進めることができる。進め方の中に、社外の人間としてコンサルタントを使うのも効果的、と書かれていて、実際に著者に対して企業からどのような形で依頼が来るのかが具体的に列挙されている。これは企業の担当者の参考になるばかりでなく、ライバルのワークライフコンサルタントにビジネスモデルを教えることにもなっていて、その太っ腹さ加減に感心した。

さらに実務に役立つ基本データ30として、厚生労働省や内閣府などが発表する統計データを紹介している。会社幹部へのプレゼン資料のストーリー別に、このストーリーならこの統計情報と、それとあれ、といったようにピックアップしてくれている。

なんでそこまで惜しげもなく、情報提供してくれるのだろう、と不思議な気がしていたが、おわりに、の次のパラグラフを読んでわかった気がする。

ワークライフバランスの問題は、もはや一企業の問題ではない。自社でいかにワークライフバランスに取り組んでも、社員の配偶者の会社にまったく理解がなければ、結局のところ家庭における協力が得られない。つまり、自社を取り巻くすべての環境=社会を、ワークライフバランス型にしていかなければならないのだ。

つまり、小室さんの夢は、社会全体をワークライフバランス型にすることなのだ。そのためには、自分がコンサルタントをするだけでは到底すべての会社をカバーできない。たくさんの人たちがそれぞれの職場で真剣に取り組むことによってしか、社会全体を変えることはできないのだ。そのために、自分が得たノウハウをぜひ使ってください、みんなで理想の社会をつくりましょう、ということではないだろうか。

だとすれば、私自身もその壮大な夢の実現に一役買ってみたい。この本を教科書に、自分の経験で補強しながら、ワークライフバランスの実現に尽力していきたいと思う。小室さんも、それを奨励してくれるに違いない。機会があったらぜひお目にかかり、小室さんの夢について確認してみたい。

(このエントリは、2009年3月31日にはてなブログ プロフェッショナルへの道 に書いたものです。)
この本は2010年に改訂版がでています。

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