男性を外した育休復帰支援が、静かに人材を失う理由

「今回は女性社員のみで考えています」と言われたとき

先日、ある企業から、育休後職場復帰セミナーのご相談を受けました。その中で、次のようなお話がありました。
男性の育休取得者は増えていて人数が多いわりに取得期間が短いため、今回は女性社員のみを対象にセミナーを実施しようと考えています。
このお考えに対し、私は率直に「それは、あまりおすすめできません」とお伝えしました。
理由はシンプルです。その判断は、結果的に“静かに人材を失う施策”になりかねないからです。

人数が多いことは、本当に問題なのか

企業側の判断には、合理性があります。
  • 対象者が増えると運営が大変になる
  • まずは女性から、という段階的な考え方
  • 少人数の方が丁寧に対応できるのではないか
ただし、ここで一度立ち止まって考える必要があります。
育休後「復帰セミナー」は、社員同士の深い交流を目的とする場ではありません。主な役割は、
  • 育休後に起こりやすい課題の整理
  • 仕事と家庭の両立をどう設計するかという視点提供
  • 会社として両立を支援するというスタンスを示すこと
です。
実際、オンラインであれば100人規模でも十分に実施可能です。「人数が多いから対象外」という理由は、この施策においては決定的な制約にはなりません。

本当に大変なのは、育休が終わってから

もう一つ、企業側が見落としやすい事実があります。
男性は、育休期間よりも、育休が終わった後の方が悩みが深くなる可能性があります。
  • 育休明けはフルタイムで仕事に復帰
  • しかし家庭では、育児・家事への関与が続く
  • 職場では「もう通常運転」と見なされる
結果として、仕事と家庭の板挟みになりやすいのは、むしろ男性というケースは少なくありません。
育休復帰支援の対象を考える際、「育休をどれくらい取ったか」だけで線を引くのは危険です。

女性だけを対象にした瞬間、会社は“宣言”してしまう

ここが最も重要なポイントです。
女性だけに育休復帰セミナーを実施することは、会社が無言で、次のメッセージを発しているのと同じです。
  • 仕事と育児の両立は、女性の問題
  • 男性は育休さえ取れば、あとは従来どおり働いてほしい
このメッセージは、会社が打ち出している女性活躍推進の方針と明確に矛盾します。
その矛盾に気づいた女性社員は、こう感じます。
  • 会社は女性活躍と言っているが、本音は違うのではないか?育休取得状況が公表されるので男性の育休を推進しているが、育休が終わったら、女性は育児、男性には仕事をメインでやってほしいに違いない
企業への信頼は、こうして静かに削られていきます。

Z世代の男性は、すでに「察して」いる

一方、男性社員はどう受け取るでしょうか。
  • 会社は男性の育児参画を本気では応援していない
  • 育休後は、家庭のことは配偶者任せで働く前提なのだ
特にZ世代の男性は、
  • 自分も育児をしたい
  • 家事育児はパートナーと分担したい
  • それを前提にキャリアを考えたい
という価値観を、はっきり持っています。
会社のスタンスがそれと合わないと感じたとき、彼らは声高に反発することはありません。
―― ただ、転職していくだけです。

女性活躍だけでは、もう回らない

結論は明確です。
女性活躍推進を本気で進めるなら、男性の家事・育児活躍推進は前提条件です。
それを欠いた施策は、企業メッセージの論理的一貫性を失い、社員からの信頼を静かに損なっていきます。
  • 男女両方を対象にする
  • パートナー(他社勤務でも可)の同席を認める
  • オンラインで実施し、参加のハードルを下げる
こうした設計は、すでに現実的な選択肢です。

問われているのは、施策ではなく「会社の本音」

育休後職場復帰セミナーは、単なる研修ではありません。
会社が、「仕事と育児をどう捉えているのか」を社員に示すメッセージそのものです。
社員は、制度よりも施策の設計や対象設定から、会社の本音を読み取ります。
だからこそ、「誰を対象にするのか」「誰を外すのか」には、細心の注意が必要なのです。

山口企画からのご提案

山口企画では、育休後支援を個人の問題ではなく、組織と人材戦略の問題として設計しています。
  • 女性活躍と男性育休の整合性に悩んでいる
  • 対象設定が、社員にどう伝わるか不安がある
  • 離職につながらない施策設計をしたい
そのような場合は、ぜひ一度ご相談ください。「よかれと思ってやった施策」が、静かな離職につながらないよう、実務視点で伴走します。
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この記事を書いた人

育児をしながら働く人と組織を支援。
育休後アドバイザー養成、育休後カフェ企画、育児中社員 and/or 管理職向けセミナーを実施。
青山学院大学の青山・情報システムアーキテクト育成プログラムADPISA企画運営。
同大学の博士後期課程在籍。

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