社会人になって数年たって仕事に慣れてくると、次第に将来のキャリアのことが気になってきます。
- 仕事はすごく充実している、家庭も持ちたい、でも今の働き方では無理
- 職場の上司、同僚、部下との人間関係が難しすぎてイヤ
- 仕事の内容や環境を変えるため、転職したほうがいいのかも
いずれにしても、将来のキャリアを考えながら今の時点で何らかの判断をしなければなりません。そんな時、自分の目標になるようなあこがれの人が身近にいたら、自然とその人を参考にしながら自分の行動を決めていくことになるでしょうが、そんな人はいない、という方も多いでしょう。
一般に、そういう人のことをロールモデルという呼ぶことがあります。
私が会社員のころは、いろいろな先輩がいましたが、ロールモデルと呼ぶには「帯に短したすきに長し」だなー、と常々思っていました。そんな私が3年前に書いたブログ記事を紹介します。
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梅田望夫さんの『Web時代をゆく』(ちくま新書)の中に、ロールモデル思考法という考え方が出てくる。道なき道、けものみちを歩くことを選択した著者が、自分の好きなことを見つけて育てるために編み出した、思考法である。
この本を読むまで、ロールモデルとは、「誰かみたいになりたい」という対象となる、単なるあこがれの人だと思っていた。
誰かを思い浮かべながら、あんなふうになれたらいいなあ、と漠然とした願望を持っていたように思う。
梅田氏の編み出したロールモデル思考法は、それとは違う。
たった一人の人物をロールモデルとして選び盲信するのではなく、
「ある人の生き方のある部分」「ある仕事に流れるこんな時間」
「誰かの時間の使い方」「誰かの生活の場面」など、人生の
ありとあらゆる局面に関するたくさんの情報から、自分と波長の
合うロールモデルを丁寧に収集するのである。
自分が惹かれる対象について、なぜ惹かれるのかを突き詰めて考えつづける。それを繰り返してたくさんのロールモデルを発見することが、すなわち自分を発見することだ、と著者はいう。
確かに、何から何までこの人のようになりたい、という存在を探そうとすると、「ロールモデルになる人がいない」なんていう事態も起こりうる。しかし、多面性を持つ自分をみつめ、それぞれ別のロールモデルをさがせばよいのだ。
また、著者は時代を超え、国を超え、時には人でないものをロールモデルにするのも全然OKとしている。身近で実在する人物である必要性はないのだ。シャーロック・ホームズでさえ、かつての梅田氏にとってはロールモデルだったのだから。
企業で働く女性技術者はまだまだ数が少ないため、「職場にロールモデルとなる女性の先輩がいない」と言う声がよく聞かれる。そんな人に限って、身近に女性の先輩がいたらいたで「職場の先輩は優秀すぎてお手本にならない」なんて言うのだ。
そんな貴女は、ロールモデルを一人に決めず、世の中をよく見てたくさんさがしてみてはいかがだろうか。
仕事への姿勢についてはこの人、子育てへのスタンスはこの人、プライベートの過ごし方はこの人、といったように。そして、自分の成長とともにそれはどんどん変わっていっていい。
今日からブログを毎日書こうと思う。ロールモデルは梅田さんである。
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この記事を書いた1年半後、つくば市のある研究所での、女性研究者向けの懇談会に出席し、これまでの仕事や子育ての体験談をお話させていただきました。
もう一人の話し手の研究職の方と私が共通して参考文献としてあげていたのが、上記で引用した梅田さんの『ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか』でした。
これはまったくの偶然で、とてもびっくりしました。
彼女も私も、「ロールモデル思考法」を引用していました。
この思考法を参考にして、ひとりひとりが、リアル、バーチャルで出会ったすべての人のいいところをお手本にしながら、自分なりの理想像を組み立てていってほしいと思います。
それをお手伝いする意味も含め、ロールモデルが見つからない、という方のために「ロールモデルの見つけ方」という講座を開くことにしました。
育休後コンサルタントとしてはこれまで子育てしながら働く方を支援してきましたが、この講座では主に20代、30代の若年層を想定しています。
子育てしながら働いている先輩がいない=ロールモデルがいないから、両立は無理、という考え方に陥っている方はいませんか。そういう方にもぜひ聞いてほしいと思っていますし、知り合いにそういう人がいたら、ぜひ紹介してあげてください。
詳細、お申し込み
(このエントリは、2008年2月20日にはてなダイアリー「プロフェッショナルへの道 ー 育休後から始めよう」に書いたものに加筆、修正したものです。)
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