循環器学会特別企画:村木厚子さん、佐々木常夫さん、山崎直子さんの講演を聴講

育休後コンサル

第77回日本循環器学会学術集会二日目にて、夢のような競演が実現しました。

会長特別企画5 理想的な医療現場とは? ―各界からの提言―
2013年3月16日(土) 9:00~10:30 第2会場 会議センター 1F メインホール(パシフィコ横浜)

座長 永井 良三 (自治医科大学)
上田 真喜子(大阪市立大学大学院医学研究科病理病態学)
演者 村木 厚子 (厚生労働省社会・援護局)
佐々木 常夫(株式会社東レ経営研究所特別顧問)
山崎 直子 (元宇宙飛行士)

村木厚子さんのお話

大きく二点にまとめられていました。

1点目は、国は少子化対策に本気で取り組むということ。
消費税を5%増やすうちの1%を、子ども子育て支援に使う、というお話です。
出生数の統計グラフを見て、あらためて第2次ベビーブーマーが第3次ベビーブームにならなかったことを再認識しました。
また、出生率と女性の労働力率が正の相関をしているグラフを見て、日本より女性の労働力率が低い国がギリシャ、イタリア、スペインであることを指摘され、ちょっと寒気が。。。

2点目は、ちょうどこの2月に発表された医療分野の雇用の質向上プロジェクトチーム報告についてでした。

医療分野の「雇用の質」向上プロジェクトチーム報告を公表

それぞれの医療機関が、自分たちの雇用の質マネジメントシステムを作ってほしい。
それを、行政や民間の専門家集団がサポートします、ということでした。
医師は、看護師などの職種に比べて、自分たちを「労働者」であると考えない傾向が強い。
それが問題を大きくしてしまっている原因、とおっしゃっていて、確かにそうだな、と思いました。

佐々木常夫さんのお話

いつものようにご自身のご家族の状況と、ご自分がビジネスマンとして実践してこられたマネジメントの極意をお話くださいました。

・タイムマネジメントは、時間の管理ではなくて、仕事の管理だ。
・働き方には、決意と覚悟がいる。
・仕事の工程表をつくれ。

佐々木さんのお話は、何度も聞いているのですが、今日は特にこれらのことばが響きました。

サイン本のこれからのリーダーに贈る17の言葉を、開演前にごあいさつがてら買いましたので、またじっくり読んでみます。

ふだん、非常にきびしい労働環境の中で働いている医師の皆さんに、部下の家族のことまでじっくり話を聞くことや、優先順位をつけて無駄を省くタイムマネジメント、仕事に志をもつということなどが届いたらいいなと思って聞いていました。

山崎直子さん

初めて身近でみる山崎さんは、とても小柄でした。

宇宙飛行士としての訓練の様子を豊富な写真で紹介してくださいました。
宇宙での緊急事態に対応するために、救命や、縫合などのトレーニングもするそうです。

10年以上訓練を重ねてやっと宇宙へ行ける。そしてそれは非常に短い期間です。
また、1回の宇宙飛行に行くのは数人の宇宙飛行士ですが、それを何十倍ものスタッフが支えています。
その想像を絶するような感覚の、ほんの一部を共有できたような気がしました。
チームを大切にする宇宙飛行と、医療現場との類似点がたくさんあったと思います。

座長からの質問

上田先生:女性医師は育児休業をとりにくい。院内保育や病児保育の充実について見通しはありますか。

村木さん:消費税が上がる平成27年から状況は改善されます。市町村が必ず保育を用意しなければならないようになります。
これまでは自治体は財政が苦しいこと理由に保育園を作らないことがありましたが、平成27年からは、事業者が保育園を作りたいと言ったら自治体はノーといえなくなります。
横浜市が待機児童をゼロにしました。これをモデルケースにしてやっていきたい。

永井先生:医師の場合、急患対応などがあり、帰りたいから帰るというわけにはいかない。
どのようにワーク・ライフ・バランスをとればよいのか。

佐々木さん:チームで、組織で知恵を出し合い,工夫していくことが必要。一歩前進、二歩前進することはできるはず。

永井先生:日本の医療の特殊性で、市場論理は通用しないし、社会主義でもない。価値観が多様でそれぞれが正しく、7すくみ、8すくみである。不採算部門をやめるわけにもいかない。

村木さん:それぞれの現場で、自分のところは何が問題で、どうしたいのかを考えなければならない。
次に、それらを持ち寄る場所が必要。みんなが持ち寄って共有し、行政やほかの業界の専門家に知恵を借りる。
これの繰り返しを行い、よい事例がでてきたら共有していく。

山崎さん:システムに余裕がないとうまくいかない。バックアップがとれるような体制が必要。
宇宙飛行士は妊娠中は「不適合」になる。不安になり、焦燥感があるが、サポート体制があるので安心できる。

佐々木さん:うちの会社では無理だ、うちの職場では無理だ、とみんな言う。
しかし、昔の病院と今の病院はちがう。ITを使い、ツールを使い、知恵を出して、特殊な世界なんだけれども知恵を出して探究していかないと。ここは無理なんだ、といったらダメだ。

村木さん:行政、民間、現場、産業界を巻き込んで。データが大切。データを蓄積していきましょう。

この企画への関わり

2年ほど前に、友人で、日本医科大学の塚田(哲翁)弥生先生にこの企画のことを聞きました。
2013年に日本医科大学はこの学会の幹事校で、塚田先生が男女共同参画の担当。
学会での企画を考えなければならず、その相談にのることになったのです。

月1回の割合でお会いし、意見交換を重ねてきました。
医療現場のダイバーシティに詳しくなかった私も、だんだん様子がわかってきて、企業との違いに気づくこともありました。

今回の3人のうち、村木さんと佐々木さんはわたしが推薦しました。
何度もいろいろなところでお話を聞いていて、この二人なら医療現場の管理職をも納得させるようなお話をしてくれそうだと思ったからです。

運良くお引き受けいただき、当初からお名前が上がっていた山崎さんも加わった3人が、それぞれの特徴を出したお話をしてくださって、本当に良かったです。

開演の1時間も前から会場前にテーブルを出して、自著にサインをしていた佐々木常夫さん。
前回学習院大学でお話をうかがったときもそうでした。。。
そして、講演後、会場前にあった数十冊の本はすべて売り切れていました!
おそるべし。

医療業界で働く皆さんが、演者が指摘したように、自分たちは特殊事情だから無理、と思い込まずに、一つ一つの問題を解決していき、私たち一般市民が安心して健康をお任せできる現場にしてほしいと心から思います。
ちいさな力ですが、今後ともお役にたてるようがんばります。

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