- 作者: 山田正人
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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(このエントリは、2009年3月30日にはてなブログ プロフェッショナルへの道 に書いたものに加筆、修正したものです。)
タイトル通り、経産省の山田課長補佐が、3人目のお子さんが生まれたときに思い切って育児休業をとった体験記です。
読み始めたら、自分の子どもが赤ちゃんの時のことを思い出しながら、そうそう、そうなのよねー、と一気に最後まで読んでしまいました。山田さんが体験したことは、出産後の母親が体験することと全く同じなので、100%想定「内」の話ですし、非常に共感できることばかりです。
よく考えてみると、そのこと自体が、非常に貴重で、意味のあることなのです。つまり、父親でも、育児休業を1年間取子育てに専念すれば、母親がそうするのと同じ視点で子どもやまわりの環境が見えてくるし、自分の中での仕事と子育ての位置づけについても、深く考えるようになる、ということです。
この体験記で、母親の体験と大きく違うところは、周りの好奇の目と常に戦わなければならないことと、職場に戻ってからどうなるのだろう、という大きな不安が本人につきまとっていることです。
母親ならば赤ん坊といっしょにいても誰も不思議に思いません。また、職場に戻ってからのことは、多少の不安はあるものの、前例はあるし、母親の場合、最初から出産前と同じ働き方に戻ろうとは思っていない人がほとんどです。
しかし、父親の場合、100歩譲って育児休業を取ったことは勇気があるというように認められるにせよ、復帰したら元のように残業もいとわず働くことを期待されがちです。また、育児休業を取ったこと自体が、出世コースからはずれるんじゃないか、と周りは心配するし、本人もそんな不安がぬぐいきれない。女性の育休はやむを得ないが、男性の育休は意図的であって相当の覚悟の上でやっていることだ、というふうに、見られがちです。
その不安は、女性である自分にはとうてい想像できないほど大きかったのではないかと思います。そんななかで、1年間の休業を全うした山田さんは意思の強い人です。そしてその強さのうちの半分は、1年間の子育ての中で得られた、子どもの命を守るのは自分だ、という自覚、責任感から来るものだったろうと思います。
この本のよいところは、育児休業をとると決めてから、復職するまでの自分の気持ちの動きや身の回りで起こったことを、できる限りありのまま、おおげさにならず、抑えすぎもせず、記録していることです。男性が育児休業をとるというのはどういうことかを知りたい人には、過不足なくその実態を伝えることができる本、と言ってもいいのではないでしょうか。育児休業を取らないお父さんにも、ぜひ読んでもらいたいと思います。