初めての裁判傍聴:育児休業差別による原状回復等請求事件 その2 #wmjp

育休後コンサル

引き続き、 JCLU9月例会「育児休業差別を問う」で学んだことを報告いたします。
このエントリは、下記のエントリの続編です。
初めての裁判傍聴:育児休業差別による原状回復等請求事件

3.妊娠・出産・育児をめぐる不利益処遇と判例動向
講師:弁護士 浅倉むつ子さん

3.1.最大化する日本のジェンダーギャップ
・世界経済フォーラムによる「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」の低下、80位(2006年)、91位(2007年)、98位(2008年)、101位(2009年)
・この理由は、政治参加と雇用の機会均等の立ち遅れが原因。

3.2.少子化対策の展開に逆行するさまざまな不利益取扱の存在
(1)急速に展開されてきた少子化対策
(2)蔓延する不利益取扱
・参考図書:杉浦浩美『働く女性とマタニティ・ハラスメント』(大月書店)

3.3.妊娠・出産・育児をめぐる不利益処遇の判例動向
(1)日本シェーリング事件・最1小判1989年12月14日
(2)住友生命事件・大阪地判2001年6月27日
(3)学校法人東朋学園事件・最1小判2003年12月4日、差戻審東京高判2006年4月19日
(注:上記事件名からの外部リンクはブログ作成者の判断でつけたものです。)

3.4.本件訴訟の位置づけと評価
・本件は、
①単に妊娠、出産・育児を理由とする不利益取扱いか、
②法に定められている権利行使を理由とする不利益取扱いか、
③妊娠・出産、育児に伴う職務能力の低下を理由とする不利益取扱いか。

→②だろう。

4.ディスカッション
会場の聴講者から集めた質問に対して、講師、原告が回答したものの中から、一部を抜粋して下記に載せました。

Q 今回もし被告(会社)から弁護を頼まれたとしたら何と言っていたか。
A 何でもっと早く相談してくれなかったのか、面談の時点でも、と言う。
絶対裁判にはしなかった。場合によっては交渉のテーブルについたかも。

Q こういった問題について法曹としてどうすべきか。
A 法廷で主張していくしかない。しかし、弁護士だけでがんばれることではない。

Q 会社はどう配慮すべきだったか。
A 時短勤務、フレックス勤務、残業なしなどのオプションを示し、本人の同意を取り付けることが大事。

Q 復職時には全く同じグレードの仕事を用意すべきなのか。そうでなければ不利益にあたるのか。
A 配置変更の必要性、前後の賃金、勤務地などから、不利益かどうかを考える。

Q 性別関係なく育児休業をとれるようにすべきではないか。
A 会社にとってそれは義務ではない。しかし放っておくと女性が90%、男性は1%しか取らない。それは給与が出ないから。できる限り有給性にすることで男性の取得が進む。

Q 復帰直後に評価するのは合理的でないのでは。
A その通り。

Q 降格ではないものの、専門性を無視した配置転換などが行われているが。
A 業務内容が契約に基づくものであれば、それは違法性がある。契約の範囲を超えた異動であれば、再契約の必要がある。

5.その他
聴講していた、杉浦浩美さんのコメント :
社会的に意義のある訴訟である。
7年、10年積み重ねたてきたことが、リセットされるくやしさ。
しかし、

ある時期セーブせざるを得ない人が多い中で、そういう人は差別されてもいいのか?
働き方が変わる人が、必要以上の差別を受けていいのか?
この、「必要以上の」という部分がグレーである。

次はいよいよ、法廷でのやりとりです。

法廷編:育児休業差別による原状回復等請求事件 その3
法廷編(2):育児休業差別による原状回復等請求事件 その4

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